深まり愛~彼は一途な想いを貫く~
お父さんからの言葉を受けて、恭也はバツの悪そうな表情をする。

「実は、まだ一度もさやかの両親とは会ったことがなくて……まずは挨拶をしてきますので、そのあとで聞いてきます」
「会ったことがない? 同棲する前に挨拶していないと?」
「すみません。バタバタしていたというか、機会を逃していまして……」

恭也は言いながら、救いを求めるような眼差しを私に向ける。私は、彼の言い訳を引き継いだ。

「恭也は挨拶すると言ってくれたんですけど、私が話すからいいよと断ったんです。両親には私から話して、了解を得ています」

お父さんは眉間にしわを寄せてから、ため息をついた。なんとなく怒られそうな感じがして、私たちは身を縮みこませる。

常識がないと思われたのかもしれない。

「挨拶は大事だ。それと、一度別れたことは知っているんだよな……やはり早めに訪ねて、結婚の許可をもらってきなさい。式をどうするとかは、そのあとだね」
「はい、わかりました」

結婚は、二人だけの問題ではない。

私たちがこれまで歩んできた人生に、家族の存在は欠かせない。私たちが結びつくことで、新たな家族ができる。

次の週、私の実家と恭也の実家へ行くことを決めた。
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