深まり愛~彼は一途な想いを貫く~
父と兄たちはスーツを着ていて、母もロングワンピース姿で、みんなかしこまった服装だった。

恭也がリビングの入り口で姿勢を正したので、私は彼を見守る。

「初めまして。さやかさんとお付き合いさせていただいています成瀬恭也と申します。本日はお忙しいところ、お時間をいただきましてありがとうございます。こちら、お口に合うといいのですが」

キリッとした顔でスラスラと話す恭也が差し出した手土産の箱を、母が受け取る。

「ありがとうございます。さやかの母です。どうもー」

にこやかな笑顔を見せる母の隣に立つ父の表情は硬かった。

「さやかの父です。どうぞお座りください」

私たちが並んでソファに座ると、兄たちも自己紹介をした。その後、家の中は静かになる。

ここで口を開くのは、恭也かな?

恭也は私と目を合わせて、頷いた。

「挨拶が遅れてしまいまして、申し訳ありません。今、さやかさんと一緒に暮していまして、今年中には結婚したいと思っています。報告という形になりますが、結婚することをお許しいただけますでしょうか」

恭也は父の顔を真っ直ぐ見ていた。
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