深まり愛~彼は一途な想いを貫く~
「さやかが決めた相手なら、どんな人でも反対しないと昔から決めていたんだ。だから……」

父は私に甘いから、すんなりと承諾してくれると思っていた。しかし、「ちょっと待った」と明人兄ちゃんが続く言葉を止める。

なぜこの口うるさい兄たちを呼んだのだろうか……。

「父さん、簡単に受け入れちゃいけないよ」

明人兄ちゃんに郁人兄ちゃんも「うんうん」と同意した。

「母さんから不憫なさやかのことは聞いてるからね」
「不憫な私?」

母はどんなふうに私のことを言ったの?

母は私と目が合った瞬間、わかりやすく目を逸した。

郁人兄ちゃんは腕組みをして、話し出した。

「三十歳の誕生日目前に付き合っていた男が浮気相手の女を連れて、さやかを振った。酷い男だと思ったよ。でも、その日に新たな彼氏ができた。さやかもやるなと思った。しかも、同棲するようになったと聞いて、俺たちは腰を抜かしそうになったぞ」
「あ、ハハハ……腰、大丈夫だった?」

笑って誤魔化すしかない。郁人兄ちゃんは、ため息をつく。

「で、問題はそのあとだ。別れたからと荷物をこっちに送ってきた。帰ってきたら、慰めてやろうとしていたのに、帰ってこなかった」
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