深まり愛~彼は一途な想いを貫く~
何で帰ってこないんだ! と激怒していたに違いない。今は怒りが静まっているみたいだけど、話しているうちに顔が険しくなっている。

私は逆鱗に触れないよう、シュンと肩を落とした。

「ごめんなさい」

謝る私の手に、恭也の手が重なった。温かくて、頼りになる手だ。彼はキリッとした表情で、兄たちを見据えた。

「申し訳ありません。さやかさんがこちらに帰らなかったのは、私のせいです。ですから、さやかさんを責めないでもらえますか」

恭也の凛とした態度に郁人兄ちゃんは、言葉を詰まらせた。その代わり、明人兄ちゃんが答える。

双子の兄たちは、昔からお互いがお互いを補っていた。そんな二人の絆を羨ましく思ったこともある。

「あなたのせいですね」

キッパリと言い切る明人兄ちゃんに、ここにいる全員が顔を向けた。

明人兄ちゃんはみんなの視線を気にすることなく、話を続ける。

「さやかの帰りを俺たちは、待っていた。それなのに、東京にまだいたいと聞かされた。そこまで酷い仕打ちを受けながらも、離れようとしない理由は、成瀬くんがいたからだろうね」
「ああ。間違いなく、そうだろう」
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