深まり愛~彼は一途な想いを貫く~
程なくして戻ってきた母の手には、木製のフォトフレームが握られていた。母はそれを誇らしげな表情で、みんなに見えるように向ける。
文化祭で、同じクラスの男女六人で撮った懐かしい写真が目に飛び込んできた。母はその中の一人を指差して、ニコリと笑う。
「この子、成瀬くんよね?」
母の問いかけに恭也が「はい」と頷く。母の目が輝きだした。嫌な予感がする……。
「さやかがこの頃、教えてくれたのよ。この写真を見せながら、この子が好きな子だって」
「えっ、ちょっと、お母さん、何を言い出すのよ」
私は慌てて、母の口を塞ごうと立ち上がった。母は私から逃げるように、後ずさりながら話を続けた。
「あれは、卒業式あたりだったかな。さやかが部屋で泣いていたの。どうしたのかと聞いたら、好きな子を振っちゃったって。傷付けてしまったとボロボロ泣いてね。何で好きなのに振るなんて、バカなことをしたのかと思ったわ」
「ああ! お母さん……誰にも言わないでと、言ったじゃないのよ」
「もちろん言わなかったわよ。でも、もう十年以上も経っているんだから、言ってもいいでしょ?」
文化祭で、同じクラスの男女六人で撮った懐かしい写真が目に飛び込んできた。母はその中の一人を指差して、ニコリと笑う。
「この子、成瀬くんよね?」
母の問いかけに恭也が「はい」と頷く。母の目が輝きだした。嫌な予感がする……。
「さやかがこの頃、教えてくれたのよ。この写真を見せながら、この子が好きな子だって」
「えっ、ちょっと、お母さん、何を言い出すのよ」
私は慌てて、母の口を塞ごうと立ち上がった。母は私から逃げるように、後ずさりながら話を続けた。
「あれは、卒業式あたりだったかな。さやかが部屋で泣いていたの。どうしたのかと聞いたら、好きな子を振っちゃったって。傷付けてしまったとボロボロ泣いてね。何で好きなのに振るなんて、バカなことをしたのかと思ったわ」
「ああ! お母さん……誰にも言わないでと、言ったじゃないのよ」
「もちろん言わなかったわよ。でも、もう十年以上も経っているんだから、言ってもいいでしょ?」