深まり愛～彼は一途な想いを貫く～
「お父さん、せっかちだよ。お姉さんが話そうとしているのを、止めちゃいけないよ」

背後から突然声が聞こえて、私と恭也は振り向く。そこには、高校生くらいの美少年がいた。恭也は本当の父親に似ているが、この子はお母さんに似ていて、アイドルみたいな顔立ちだ。

背は恭也より高そうだ。そういえば、大きく成長したと言っていた。

「弟さん？」
「そう、弟の翔太（しょうた）」

恭也に紹介されて、翔太くんはニッコリと微笑んだ。

眩しい笑顔だ。

「こんにちは、翔太です」
「中田さやかです」
「さやかさん、かわいいですね！」
「えっ、あの……」

翔太くんは距離を縮めて、私の右手を両手で掴んだ。美少年に握られるのは悪い気がしないが、困惑する。恭也が私の肩を抱き、低い声を出した。

「翔太は誰に対しても、ほんと馴れ馴れしいよな。さやかが困っているから、離して」
「はーい」

翔太くんは悪びれた様子を一切見せず、パッと手を離した。

「あら？　みんなまだ立っていたの？　早く座ってね」

カップを乗せたトレイを持ってきた恭也のお母さんに押される形で、それぞれがソファに座る。
< 146 / 176 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop