深まり愛~彼は一途な想いを貫く~
「あの、ほら……みんなに話すことないの?」
「話すこと? さやかを見せに来ただけなのに?」

私はガクッと肩を落とした。私は見世物ですか……。

翔太くんが呆れた様子で「兄さん」と呼んだ。

「何しに来たのさ?」
「何って、さやかをみんなに紹介して、さやかにも俺の家族を紹介するために来たんだよ」
「じゃあ、もう用は済んだってこと?」
「いや、違う……ああ! さやか、ごめん!」

恭也は突然我に返ったかのようにハッとなり、顔の前で両手を合わせた。

謝ってもらいたいわけでは、ない……。

恭也は気を取り直したのか、姿勢を正した。

「電話でも話したけど、さやかと結婚します。式とか具体的なことはまだ決めていないけど、入籍は年内にする予定……で、いいんだよね? さやか」

今、ここで私に確認?

私はクスッと、笑いを漏らしてから「うん」と返した。

「と、いうことです」
「何が、ということなんだか……兄さん、大丈夫なの? そんなんで、さやかさんに捨てられない?」

即座に翔太くんに突っ込まれて、恭也は動揺する。
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