深まり愛～彼は一途な想いを貫く～
「さやか……俺、マジで嬉しい」

恭也の瞳はまたしても、潤んでいた。本日、何度泣きそうになっているだろう。

良かったねと言われたのが、余程嬉しかったみたいだ。

「私も嬉しいよ」

微笑むと、彼はガバッと私を抱きしめた。

「ちょっ、恭也？」

いきなりの抱擁に焦り、彼の背中を叩く。だが、離れる気配がまったく感じられない。

お父さんが「おやおや」と言い、お母さんが「あらあら」と微笑ましそうに言う。

翔太くんだけが冷ややかだった。

「兄さん……さやかさんがどれだけ好きなのか、よーくわかったよ。でもさ、受験生の前では少し抑えてくれない？」

翔太くんの言葉が心に刺さったのか、恭也の腕の力が緩んだ。彼は、済まなそうな顔を翔太くんに向けた。

「ごめん、翔太。勉強は捗っているか？」
「あまり捗ってないから、塾行ってくるよ」

翔太くんが立ち上がり、恭也はやっと私を解放した。

「今日、塾の日だったのか？」
「ううん。でも、家で勉強する気分じゃなくなったから、自習室でやってくるよ。さやかお姉さん、ゆっくりしていってくださいね」

柔和な笑みを浮かべて、手を振る翔太くんに私の顔も綻ぶ。気遣いのできる優しい子だな。
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