深まり愛~彼は一途な想いを貫く~
「翔太くん、ありがとう。勉強、頑張ってね!」
「ありがとうございます」

翔太くんはリビングのドアの前まで行き、ふと足を止めて振り返った。

「兄さん、結婚式は俺の受験が終わってからにしてもらえると助かる」
「ん? あ、もちろん、そのつもりだよ。翔太の受験が終わった……来年の春にと考えているから、心配するな」
「マジで俺のこと、考えていた?」

翔太くんは疑いの眼差しを恭也に向けた。私も同じように恭也を疑った。

弟の受験が終わったらとも、来年の春とも聞いたのは初めてだったからだ。

「当たり前だろ。大学受験は、将来を決める大事なことなんだから」
「へー。結婚よりも?」
「それは、結婚の方が大事に……おい、翔太」

恭也はまるで誘導尋問に引っ掛かったようかのに、慌てた。

「まあ、今の兄さんはさやかお姉さんしか見えてないみたいだから、仕方ないよね」
「受験生だったことを忘れていたわけじゃないからな。ただ……」
「もういいよ。合格したら、お祝いたくさんちょうだいね」
「お、おお! 任せろ。何でも買ってやる。だから、合格できるよう、頑張れよ」
< 151 / 176 >

この作品をシェア

pagetop