深まり愛~彼は一途な想いを貫く~
そういえば、顔合わせをするにあたって、私の両親の都合を聞いてほしいと言われていた。

恭也がその話をしなかったせいではないけれど、すっかり忘れていた。

今の恭也には、二つの家がある。小野田家の方で望んでいるからといっても、成瀬家を蔑ろにすることはできない。

彼は板挟み状態でありながらも、私の両親よりもこちらと話すのが先と考えたのだろう。

「顔合わせ……そうね、それもやらないとよね。うちは別にしなくてもいいけど、それだとさやかさんのおうちに失礼になるかしらねー?」

お母さんは頬に手を当てて、小首を傾げる。

「いえ、うちも顔合わせを絶対したいと言わないと思います。私には既に結婚している兄が二人いますが、どちらも顔合わせや結納はしないで、お互いの両親は結婚式で初対面でした」

我が家は人に迷惑をかけることがなければ、形式にはこだわらない。

今どきの結婚はいろんな形があるから、当人が希望する形でやるのが望ましいという考えだ。

だから、私が恭也と同棲すると伝えた時も強く反対はしなかった。

兄たちはちょっとうるさかったけど……。
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