深まり愛~彼は一途な想いを貫く~
彼が説明(言い訳)している途中で、女が口を挟む。目にハンカチを当てながら……。

「中田さん、ごめんなさい……私、好きになっちゃったんです。だから、誘ってしまって……」
「いや、俺が断らなかったのが悪くて……」
「いえ、悪いのは私です。どんな罰でも受けますから、許してください」

罰を受けるけど、許してくれ?
おかしなこと、言っているという自覚はないの?

怒りが増して、腕がわなわなと震えた。しかし、それよりも私の心はかなりのダメージを受けていた。

彼は同じ会社の二つ年上の先輩。社内で、私たちの交際は誰もが知っていた。この泣いている女もだ。

知っていて、彼を誘うという……そして、彼は誘われてしまったという……許せるわけがない。

恋人を奪われた私は、惨めな女だ。

私を惨めにさせたのは、この男。浮気する男なんか、いらない。

別れたくないとしがみつくような、みっともない真似は絶対にするもんか!

怒りがさらに込みげてきた私は、ひと言発した。

「わかった」

それを聞いた二人が、揃って俯いていた頭をあげた。二人の目には、なんだか希望の光が灯っていた。

なんなのよ……むかつく。

浮気を許して、認めたつもりはない。でも、二人は許されたと思ったのだろう。女が腹部に手を当てながら、口を開く。
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