深まり愛~彼は一途な想いを貫く~
私は持ってもらっていた荷物を受け取ろうと手を伸ばす。今日は帰ろう……。

近くに駅があるから、電車で帰ればいい。それから、今後のことを考え直そう。

「帰らないで」

成瀬は私の荷物を手放そうとしなかった。

「ごめん、今日は帰る」
「中田、ちゃんと話をさせて」
「話?」
「住むか住まないかはひとまず置いといて、俺の事情を聞いてもらいたい」
「事情……?」

私は再度、マンションに目を向けた。ここに住むにあたって、どんな事情があるというのだろう。

一方的に拒否するのではなく、話を聞くことは大事だ。

とりあえず、成瀬の部屋に入った。

想像以上に部屋は広く、内装はシックな感じで快適に過ごせそうだった。

「ここが中田の部屋だよ」

広いリビングダイニングルームの他に二つの部屋があった。そのうちの一つを私の部屋だと案内された。

ベッドとドレッサーだけが置かれたシンプルな部屋だが、大きいクローゼットがあって、収納には困らなさそうだ。

だが、私はここで暮らさない……。

見ただけで何も言わずにいると、成瀬が顔を寄せてきた。

「な、なに?」
「そんな沈んだ顔、しないでよ」
< 24 / 176 >

この作品をシェア

pagetop