深まり愛~彼は一途な想いを貫く~
料理はどれも上品な味で、文句なしに美味しかった。

「こんな料理を家で味わえるなんて、贅沢だね」
「まあ、悪くはないよな」

成瀬は浮かない顔で、食後のコーヒーを淹れるためにキッチンへ向かう。

なにか不満でもあるのかな?
苦手な物があったとか?

私は成瀬のあとを追った。カップを出す彼の動きを見ながら、訊く。

「成瀬は美味しいと思わなかったの?」
「美味しいとは思うよ。こういうシャレた料理もたまにはいいかもしれないけど、やっぱ家では家庭的というか普通の料理がいいね。今度は俺が作るよ」
「成瀬が……あ、料理得意だったよね。お弁当も自分で作っていたものね」

高校の時、成瀬が料理男子だったことを思い出した。

女子で自分で作っている子はいたが、男子では成瀬だけだった。

確か……彼は年の離れた弟の分も作っていたはずだ。

一度写真を見せてもらったことがあった。成瀬に笑顔が似ていて、かわいい子だった。

「そういえば、弟くんは元気? ひと回り違うんだったよね?」
「ああ、元気だよ。よく覚えているな。今、高三だよ。生意気に俺より背が高いんだ」
「成瀬よりも大きいの? そんなにも成長したの?」
< 26 / 176 >

この作品をシェア

pagetop