深まり愛~彼は一途な想いを貫く~
成瀬は目を丸くする私に苦笑して、頷いた。

「今まで渡せなかったお小遣いも含んでいるとも言っていた。だから、家賃はいらないよ。中田は何も気にしなくても大丈夫」

家賃を払わなくていいのはありがたいが、お礼とお小遣いにしては規模が大きすぎる……。驚くことの連続で、脳内を整理するのが大変だった。

大丈夫と言われても、大丈夫だと思えない。

私は、二人分の空になったコーヒーカップをキッチンに持っていった。

「中田」
「え、わわっ……」

背後から呼ばれて、カップを落としそうになった。

危ない、危ない。

成瀬が付いてきているとは、思っていなかった。

「今日、泊まってよ」
「えっ、いや、あの、帰るよ。まだ電車あるるし……」
「なんで? 再来週には一緒に住むんだから、泊まるくらい問題ないだろ?」
「問題はあるような……」
「どんな問題? 一緒に暮らすって、言ったよね? 嘘なの? それとも俺の家族の話を聞いて、気が変わった?」

成瀬は距離を縮めた。問い詰められて、追い詰められて、後ずさりした私は壁に背中をつける。

成瀬は私の両側に手をついた。右にも左にも逃げられないというか……身動きできなくなった。

「おの、成瀬……」
「お願いだ……」

辛そうな声が耳に届く。成瀬の顔が何だか泣きそうに見えた。
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