深まり愛~彼は一途な想いを貫く~
どうして、そんな顔をするの?

不安そうにする成瀬の気持ちに寄り添いたくなり、彼の胸に右手を置いた。

私が触れたことで、成瀬の瞳が揺らぐ。

自分から触れてしまった……。

成瀬は手を壁から、私の手に移動させた。私の右手は彼の両手に包まれる。

温かい手だった。

「俺のそばにいて……頼む」

ドクンと心臓が波打つ。

こんな辛そうな顔でお願いをされて、無下にはできない。

「一緒に住みたいと言ったのは、嘘じゃないよ。ちょっと……今の状況が把握できなくて、困っただけだから」
「困っただけ?」
「うん、そう」
「じゃあ、帰らない?」
「そ、それは……」

さっきまで帰ろうとしていた。今もどちらかといえば、帰りたい。一人でいろいろと状況を整理したい。

だが、不安げにしている成瀬から離れられない。

答えに悩んでいると、成瀬の顔が近付いてきた。

彼の手は今、私の両頬に触れている。

何をしようとしているの?
もしや、キス?

「中田……」

心臓の動きがより速くなった。

私はギュッと目をつぶる。

額にコツンと何かが当たった。その何かが成瀬の額だとわかるまで、時間はかからなかった。

「な、成瀬……あ、あの……」
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