深まり愛~彼は一途な想いを貫く~
上擦った声が出てしまったが、距離が近すぎる成瀬と鼻先が微かに触れ合う。

「好きだよ。離れないでほしい……」

成瀬は私の首筋に顔を埋めた。何に怯えているのかわからないけれど、微かに震えていた。

帰りたかった気持ちが薄れていく。彼の背中に腕を回して、そっと力を入れた。

「うん……ここにいる。ごめんね、変なこと言っちゃって」

成瀬は私に居場所をくれようとした。優しさを拒むのは、間違っている。

私も彼といたいと思ったのだから。

「良かった……ありがとう」
「でも、私、寝るのは自分のベッドというか、成瀬が用意してくれたベッドで寝るからね」
「うん、わかってるよ。今日は何もしないから、安心して」
「今日は?」

私が聞き返すと、成瀬はハハッと笑った。

「やっぱり中田は鋭いな。じっくり、じわじわと攻めさせてもらいます」

身の危険を感じるような……再会した日の夜、私たちはホテルのベッドで一緒に寝た。

何もしないで眠っただけだが、朝目覚めたて顔を見合わせた時は照れくさくなった。

結婚前提での同棲で、交際する意味も含まれている。だから、それなりに覚悟はしていた。 
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