深まり愛~彼は一途な想いを貫く~
だけど、まだ切り替えがちゃんとできていない。気持ちを整理し、新しい生活に慣れてから向き合いたい。

ここまで来ておきながら、何を拒んでいるのかと自分でも思うけれど。

「ごめんね、私……めんどくさいよね?」
「えっ、どういうこと?」
「一緒に暮らすと、決めたのに逃げようとしたじゃない?」
「ああ、そうだな。マジで焦ったよ」

成瀬は苦笑して、私の髪に手を触れた。

焦ったと言うけれど、今成瀬の表情は穏やかだ。

帰らないと言ったから、安心したのかもしれない。私も何もしないと言われて、今は安心している。

「ほんと、ごめんね。この部屋がすごすぎて、怖気づいちゃった」
「何度も謝らなくていいよ。中田の気持ち、わかるよ。俺も昨日落ち着かなくてさ、無駄にうろうろしたからね」

歩き回る成瀬を想像したら、おかしくなった。

「フフッ、庶民っぽいね」
「そうだよ、俺は庶民。中田と変わらないからな」
「同じだね。でも、社長になるんだよね?」
「自分が社長に向いているとは思えないけど、継ぐと決めたからには頑張るよ」 

成瀬は自分の身に置かれている状況を改めて確認したようで、真剣な顔をした。

「大変だろうけど、応援するね」
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