深まり愛~彼は一途な想いを貫く~
「私、そんなに寒がりじゃないけど。それに、今はまだ暑いよ?」
「俺の方が寒がりかもね。さやかと一緒に寝たい」

遠回しでは通じないと思ったのか、ストレートに訴えてきた。

「ホテルで寝たじゃないか? それと変わらないよ。あの時、温かくて気持ちよかったよね?」

『よね?』と確認されて、『うん』と答えにくい。

でも、恭也の体温を心地良く感じたのは確かだ。

「寝る場所については、後ほど考慮します。それよりも、お腹すいたよ」
「ああ、そうだな。行こうか」

腹ごしらえの方が先である。

外に出て、並んで進む。車道側を歩く恭也が手をこっちに伸ばした。

「手が寒い」

朝晩は涼しくなってきているが、まだ寒い季節ではない。

手を繋ぎたいなら、そう言えばいいのに……今日の彼は変で、かわいい。

私は頬を緩めて、出された手を握った。

「恭也の手、あったかいよ?」
「そう? んー、さやかの方が冷たいね。まあ、どっちでもいいや。手を繋げれば問題なしさ」
「だったら、手を繋ぎたいと言えばいいじゃないのよ」

恭也は繋いだ手をブンッと大きく振って、口を尖らせた。

「そんなふうに言うの、高校生みたいで恥ずかしいじゃないか」
「えー、手が寒いと言う方が恥ずかしくない? 大人だったら、何も言わずに握るのがいいと思うけど」
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