深まり愛~彼は一途な想いを貫く~
「大丈夫だから。今は面接のことだけを考えて」
「うん……わかった」

悪いことでないのなら、今考えるべきではないかな。

それよりも面接だ。どんなことを聞かれても答えられるようにしておかなくては……。


「行ってくるね」
「行ってらっしゃい」
「片付け、いつもありがとう」
「気にしないでよ。私は時間があるんだから」

毎朝、玄関で同じやり取りをしている。恭也は朝食後の片付けを私に任せるのを申し訳ないと思っている。

私はいつも朝食の用意ができるまでのんきに寝ているを悪いと思っているのに。

恭也はカバンを床に置き、私を引き寄せた。頬にキスをして、耳元で囁く。

「離れたくないな」

ドキッと胸が高鳴ったが、彼の胸を軽く押した。

「ほら、行かないと遅れちゃうよ。恭也も頑張って」
「うん、行ってきます」

恭也は名残惜しそうにしつつも、カバンを持った。

なんだか新婚夫婦みたいだなと、心がむず痒くなる。

仕事が思いのほか大変なようで、家にいる時の恭也は私にくっついてばかりいた。
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