深まり愛~彼は一途な想いを貫く~
別れたあと、話すことは一度もなかった。話したくもないし、顔も見たくなかった。

退職した原因は、この男だ。

働きやすい職場が働きにくい職場になった。

だから、辞めたのだ。

ほんと、無神経な男だ。

私、こんな人のどこが好きだったのだろう。

おおらかな性格だと思っていたが、深く考えてない人だったようだ。

裏切られて傷付いた人間の気持ちをまったく理解していない。

「あなたと同じ場所にいたくなかったから」

どうして私が変わらず働けると思うのか……私は繊細な心の持ち主なのに!

「そうか、それなら仕方ないね」

簡単に納得されて、なんだか悔しくなる。でも、もう関わりたくない。

唇を噛みしめて、ふたたび背を向ける。

その時、白い車が路肩に止まった。

「やっぱりさやかだ。これから、面接?」

窓を開けて助手席から顔を出したのは、恭也だった。なんというタイミングで現れるのだろう。

車は恭也のとは違う。社用車かな?

運転席には、四十歳くらいの男性がハンドルを握っていた。

私とは逆の方向に歩きだしていた元カレたちが、こちらを向いたのが目の端に入った。

私はそれに気付かないふりをして、車に近付く。
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