深まり愛~彼は一途な想いを貫く~
「うん、そうなの。そっちはどこか行くところ?」
「ああ、取引先の人に会う約束があって……その人、知り合い?」
「知り合い?」

恭也が私の背後に視線を動かしたから、私は誰がいるのかと振り向く。

いつの間にか、元カレと山中さんがいた。山中さんが元カレの腕を引っ張る。

「行きましょうよ」
「ちょっと待って。さやか、誰?」

どうして来たのか……。

まずは、先に聞いてきた恭也に答える。

「辞めた会社の人。さっき偶然、会ったの」
「あー、そうなんだ。どうも」

恭也が会釈すると、二人も「どうも」と言った。

恭也は車から降りて、自分の胸に手を当てた。

「俺は、さやかと今一緒に暮らしている者です」

恭也の挨拶に「はっ?」や「ええっ!」という驚きの声があがった。

元カレが私の肩を掴む。

すると、恭也が私を引き寄せた。

「触らないでもらえませんか」

恭也の牽制に元カレの顔には当惑の色があらわれた。

「さやか、この人とどういう関係?」
「どういうって……彼氏だよ」
「へー。そうか……うん、良かったな。安心したよ」

何の安心なんだか……。
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