深まり愛~彼は一途な想いを貫く~
元カレは恭也を真っ直ぐ見据えた。

「さやかのこと、よろしくお願いします」

何様のつもりなの!

恭也も同じように思ったようで、鋭い視線を返した。

元カレだとは言わなかったが、気付いたのかもしれない。

「そちらに言われる筋合いはないです」

うん、その通りだ。

さすがに不穏な空気を感じ取ったようで、元カレは顔を引きつらせた。

「ああ……まあ……そうですね。じゃ、さやか、いろいろと頑張って。元気でな」

手をひらひらさせて、去っていく。

親しげに名前を呼び捨てにするのをやめてもらいたい。

もう二度と会いたくない。

恭也が私の肩を抱いて、顔を覗き込んだ。

「さやか、大丈夫か?」
「うん、ありがとう。恭也は時間、大丈夫なの?」
「ん、あ、行かなくちゃ。すみません、お待たせしました」

腕時計を見た恭也は運転席の人に謝って、車に乗り込んだ。

私も行かなくてはならない。

「さやか、面接落ち着いて」
「ありがとう。恭也も仕事、頑張ってね」

恭也は穏やかな顔で頷いた。

さっきまで苛立っていた気持ちが落ち着いていく。

去っていく車を見送ってから、やっと面接場所へと向かった。
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