深まり愛~彼は一途な想いを貫く~
「ただいま」
「おかえりなさい」

玄関で出迎えると、恭也は鼻を動かした。

「美味しそうな匂いがする!」
「今、グラタン焼いてるの。あと五分くらいで、できるよ」
「いいタイミングだ」
「フフッ。帰ると連絡来てから焼き始めたから」

恭也は帰るときには必ず、連絡をくれる。

一日中時間に追われているそうだが、ひと息ついた時に私の顔を思い浮かべるらしい。

そのことを聞いたときは、照れてしまったが、言われて悪い気分にはならなかった。

恭也が着替えている間にグラタンができあがったので、サラダやホタテのバター焼きと共にテーブルに置く。

「明日は休みだから、飲む?」
「飲みたいな。俺が出すよ」
「ありがとう」

恭也は先週購入したばかりのワインセラーから白ワインを一本取り出した。

お互いにワインが好きだということが判明して、買ったのだ。

「面接、どうだった?」
「ちゃんと答えられたよ」
「おお、良かった」
「心配してた?」

恭也はグラスにワインを注ぎながり、「ちょっとだけ」と返事した。

「恭也に会えたからだよ。落ち着いて、話せたもの」
「俺もあそこで会えて良かったと思うよ……うん、美味しい!」

グラタンを食べた恭也は顔を綻ばせた。
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