深まり愛~彼は一途な想いを貫く~
遠い記憶がよみがえってくる。

成瀬と名乗る男性は懐かしい笑顔を見せた。

「そう! 久しぶりだよな。何年ぶりだ? 十年ぶりくらいか」

私は戸惑いながら、コクコクと首を縦に動かした。

「あ……うん、そのくらいかな?」
「こんなとこで会うなんて、びっくりだな。俺、出張で来てるんだけど、中田は……」

成瀬恭也(きょうや)は高校の時の同級生だ。名簿で私たちは前後だったことから、話をすることが多くて仲も良かった。

実は、卒業間際に成瀬から告白された。

成瀬は地元の国立大学、私は東京の私立大学に進学が決まっていた。だから、遠距離恋愛をする自信がなかったので断った。

大学卒業後もこっちで就職したから、帰省で地元には年に二、三度ほど帰るだけだった。今まで偶然に会ったことは、一度もなかった。

それなのに、こんな日に再会するなんて……。

成瀬は私の持っている荷物を見て、ためらいがちに聞く。

私の体が出入り口に向いていたからだろう。

「どこに行こうと?」
「帰ろうとしていたの」
「えっ、泊まるんじゃなくて?」

夜のこの時間に帰るのは、おかしいと思ったようだ。朝だったら、おかしく思わないだろうな。

私は朝まで、ここにいられない……。唇を噛みしめてから、答えた。
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