深まり愛~彼は一途な想いを貫く~
いつもは微かな体温を感じながら、寝るだけだった。

今夜は私も酔っているようだ。心臓の音が聴こえる距離にいたくなった。

恭也は既に目を閉じている。

もう眠ったかな?

私は彼の胸にそっと頭を預けて、ギュッと抱きついた。

温かさが気持ちよくて、私の瞼も重くなっていく。

このまま眠れそう……と思われたのだが、夢の中に入っていたはずの恭也の手が動いた。

私の背中に回った手は、もぞもぞと何かを探しているかのような動きをする。

起きているのか、眠っているのか……どっちだろう?

「恭也?」
「ん」

返事が短すぎて、わからない。

「寝ている……よね?」

少しだけ頭を起こして、上を向いた。見えるのは、恭也の顎。

その顎が動く。

「さやか?」
「うん?」
「顔、見せてよ」

どうやら起きているようだ。

私は体を起こして、両手を恭也の肩の上に置いた。

「見える?」
「よく見えるよ。ねえ、キスして」
「っつ……!」

安心した笑顔を見せた恭也のおねだりに息をのむ。

私からキスをしたことがない。

そもそも、どこにしろと?

恭也は私の頬に手を添えた。

心臓がドクンと跳ねる。

「どこにしたらいい?」
「口がいいな」
「うん、わかった」 
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