深まり愛~彼は一途な想いを貫く~
危機
「さやかー、ご飯できたよー」

洗面所で髪をハーフアップにしていると、呼ばれる。

今日はフレンチトーストのようで、バターの香りが漂ってきていた。

手を洗い、キッチンに行く。

恭也はカップにコンソメスープをよそっていた。

スープがあるなら、コーヒーはいらないかな。鍋を覗きながら、恭也に聞く。

「コーヒー、どうする?」
「俺はいらないよ。さやかは?」
「私もいらない。スープ、おかわりできそうだね」
「おう、飲んで飲んで」

この部屋で彼と向き合い、食事する時間が好きだ。

出勤前の忙しい時間なのに、穏やかな空気が流れる。

朝のひとときを大切にするため、私たちは早起きしていた。

「今日は午後から晴れるみたいだよ」
「そうか、でも今日はずっと中なんだよな。残念」
「フフッ、私もだけど」

天気が良かろうと悪かろうと仕事に行かなければならない。晴れているからとピクニックとか、できない。

社会人とは、そういうものだ。

「仕事で困ってること、ない?」
「ないよ。今のところ順調だよ」

私は先週からマーケティング会社で働いている。思いのほか、早くに再就職先が決まった。
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