深まり愛~彼は一途な想いを貫く~
「チャンスか……私ね、さっき振られたばかりなの。今なら、落としやすいのかもね」

自虐気味に笑うと、成瀬は私を抱きしめた。

突然の抱擁に心臓がドキッと飛び跳ねる。

「ごめん……中田の状況を知らなかったとはいえ、浮かれて」
「ううん……」
「でも、マジで心配なんだ。今夜、一緒にいさせてくれないか?」

成瀬から伝わる温かさは今の私に、一番必要なものかもしれない。

三十歳目前にして、一人ぼっちになった私は……一人でいるのが怖かった。彼と過ごすはずの部屋に、一人ではいられなかった。

自分の胸の中に私をおさめている成瀬は、言葉を続ける。

「俺は絶対に、中田を泣かせない。ものすごく大切にするし、ものすごく幸せにする自信もある」
「えっ?」

告白めいたことを言い出すから、思わず顔をあげた。至近距離で視線が絡む。

成瀬は柔和な笑みを浮かべて、決定的な言葉を紡いだ。

「結婚しよう」

頭が真っ白になった。今夜、プロポーズされるかもと期待していたけど、それは成瀬からではない。

でも、成瀬は確かに言った。迷いなど何もないといったふうな表情で……。
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