深まり愛~彼は一途な想いを貫く~
前みたいに恭也を傷つけたくないのに……恭也には、いつでも笑顔でいてほしいのに……。

でも、今だけだ。

彼はきっとすぐに立ち直って、前を向いていけるはず。

「応援しているからね。恭也が立派な人になるのを楽しみにしているからね。頑張って」
「さやかがいないと……頑張れない」
「恭也らしくないこと、言わないでよ。私は強い恭也が好きなんだから」
「強い俺?」

目を見開く彼に、私は微笑んだ。恭也は戸惑ったように、瞬きをした。

意外なことだったのかな。

「恭也は強くて、優しい。だからね、絶対みんなを守れるよ」
「さやかも守りたい」

私のこともちゃんと考えてくれる恭也が好きだ。

偽りのない気持ちを伝えてくれる彼に対して、私は嘘の言葉を吐いた。

「私は、自分のことは自分で守るよ。恭也がいなくても平気」
「俺がいなくても、いいのか?」

恭也にいてほしい……ずっとそばにいたい……。

心と裏腹の答えを笑顔で、返す。

「うん、いなくてもいいよ」

恭也は悲しそうに目を伏せた。

「そうか、わかった」
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