深まり愛~彼は一途な想いを貫く~
ようやく納得してくれたので、胸を撫で下ろす。

いつか、立派になった恭也が古谷さんと並ぶ姿を見ることになるかもしれない。

その頃には私も別な幸せを掴み取れていると、いいな。

重なっていた道が別々の方へ向かっても、それぞれが幸せになれたら……心から笑顔になれる。

そんな未来を願って、先にカフェを出ていく恭也を見送った。

「元気でね」
「さやかもな」

恭也の姿が完全に見えなくなってから、私は泣いた。

彼の前では絶対に泣かないと我慢していた。

彼のカップを片付けに来たウエイターが私を見て、ギョッとした顔で息をのんだ。

ハンカチで涙を拭いながら、「あの」と声を掛ける。ウエイターは、「はい!」と背筋を伸ばした。

「コーヒー……お代わりください」
「か、かしこまりました。少々お待ちくださいませ」

ウエイターが離れていってから、ハンカチを広げて顔全体を覆った。

止まれ、涙……。

メイクが崩れた顔では、外歩けないよ……。

お代わりしたコーヒーが届いても、なかなか涙は止まらなかった。
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