深まり愛～彼は一途な想いを貫く～

そんなことを思いながら、一つのトマトに手を伸ばしかけた時に「さやか」と呼ばれた。

今日は知り合いに遭遇する日なのだろうか。

会いたくはないけれど、会いたい……ううん、会ってはいけない人だ。

「恭也……」
「久しぶりだな」

彼の持つカゴには、まだ何も入っていない。スーパーに入って来たばかりのようだ。

このスーパーは、お互いが住むマンションの中間辺りに位置している。

私は返事をせず、十日ぶりに見る彼を上から下までじっくりと眺めた。ライトグレーのシャツにブラックジーンズ、シャツの上には黒いパーカーを羽織っている。

ラフなスタイルだけど、相変わらず爽やかでかっこいいな。

「さやか？」

見惚れていると、訝しげな声でまた呼ばれた。

「あ、恭也も買い物？」
「ああ。ここ、野菜がいろいろ揃っていると会社の人に教えてもらってね」
「うん、いろいろあるよね。私も今、見ていてビックリしていたとこなの……えっと、恭也？」

今度は恭也が何も言わず、私の顔をじっと見つめていた。

彼は私の問いかけにハッとなる。

「あ、少し痩せたんじゃないか？　ちゃんとご飯、食べてる？」
「食べてるよ。今日もお昼にフレンチトースト……」