フラグを全力で育てる系女子の恋愛事情〜なぜか溺愛されてますが〜
華との通話を切った後、コンビニに入る。駅近ってわけでもない夜十時前のコンビニは、私しかお客さんがいなかった。

お目当てのスイーツを何個も買って、ホクホクしながら自動ドアをくぐる。

お店を出て数歩歩いた所で、

「うわぁっ」

急に何かにつまずいて、私は盛大に前につんのめった。

え、な、何!?

「わり」

私がつまずいたのは、大きなバッグだったらしい。その横に、バッグの持ち主らしい男の人がいる。

「お前、大丈夫か?」

大して心配してなさそうな様子で、私に声をかけてきた。

「い、いや…」

「コケた?ケガとかしてねぇ?」

「あ、はい」

「悪かったな。ちょっとイラついてよ、ついカバン投げちまった」

ガハハ、なんて豪快に笑ってるけど、コンビニの出入り口前でそんなことしないでほしい。

謝ったり怪我の心配してる辺り悪い人ではなさそうだけど、見かけは完全にヤンキーだ。

コンビニからの明かりに照らされた金髪に、ダボッとした服装。言葉遣いも、ガッツリ初対面の相手とは思えない気さくさ。

ヤンキーがやたらと気さく説は、やっぱり正しかったらしい。

「わたしこそ、カバン蹴っちゃってすみません。中のもの壊れたりしてませんか?」

真っ黒のボストンバッグを見つめる私に、その人は数秒ぽかんとした後、なぜか私の肩をバシバシと叩いた。

「い、痛っ!」

「俺が勝手にぶん投げたカバンの心配するとか、お前いいヤツじゃん!」

「は、はぁ?」

「ほら、これお前のだろ?」

笑いながらその人が手渡してくれたのは、さっきまで私が手に持ってたコンビニの袋。

「けつまずいた時思いっきり飛ばしてたぞ」

「…どうも」

お礼言うのなんとなくいやだけど仕方ない。
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