フラグを全力で育てる系女子の恋愛事情〜なぜか溺愛されてますが〜
男の人から袋を受け取って、小さくお辞儀をする。

「じゃ、悪かったな」

「いえ、こちらこそ」

家へ帰ろうと足を進めて、ふと止めた。ビニール袋に手を突っ込んで、何個か買ったコンビニスイーツの一つを掴んだ。

「よければ、一つ食べます?」

私の大好きな、もちもちのクリームたい焼き。

「は?俺?」

さっきまでガハガハ笑ってたその人も、流石に目を白黒させてる様子。

「さっきイライラしてるって言ってたから、甘いものでもどうかなと」

「…」

あ、ちょっとやり過ぎたかな?

そう思って引っ込めようとすると、その人は私の手からパッとたい焼きを取った。

「もらうわ、サンキュ」

ニカッと笑った顔は、ちょっと眩しい。

「やっぱお前、いいヤツだな!」

「…じゃあ、失礼します」

受け取ってもらえたことにちょっとホッとして、今度こそ帰ろうとする。

「なぁ、お前家この辺?」

「は、はぁ」

「送ってやろうか?」

「や、大丈夫」

「遠慮すんなって」

遠慮とかじゃないです、本音です。

「ホントに帰れますから」

「そっか?気ぃ付けてな。変なヤツに声かけられても無視しろよ」

寧ろハタから見れば、現在進行形で不良に絡まれてるように見えてる気がする、とは言わないでおく。

「じゃあ、失礼します」

「おう、じゃあな!」

ニカッと笑って手を振る金髪さんは、やっぱり悪い人には見えなかった。

まぁ、もう会うこともないだろうけど。
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