フラグを全力で育てる系女子の恋愛事情〜なぜか溺愛されてますが〜
「怖い?」

「そう。恋すること、怖がってるでしょう」

「別に怖がってるわけじゃ…」

「周りからどう見られるか、相手からどう見られるか、そういうのが気になる小夏ちゃんの気持ちもよく分かるよ?だけど」

陽子さんはなにかを思い出すみたいに視線を彷徨わせて、それからフフッと笑った。

「好きになったら、そんなの全部どうでもよくなっちゃうから。自分でも、不思議なくらいに」

「自分でも、不思議なくらい…」

「例えば周りが“どうしてあんな人と”って言ったとしても、逆に“似合ってないから苦労する”って言ったとしても、それは結局自分が一番よく分かってることなんだよね」

陽子さんの瞳が、優しく揺れる。

「だからね?小夏ちゃんも、一度そういうの取っ払っちゃってもいいんじゃないかな?その男の子と恋に発展するかは小夏ちゃん次第だけど、変に怖がったり遠慮したりしてると、その子のいいところを見逃しちゃうかもしれないし」

「…うん」

「今からあんまり頭で考えなくても、流れに身を任せるのもいいかなって私は思うよ。流されろって意味じゃなくてね?」

陽子さんの言ってることの半分は、やっぱりまだよく分からない。

だけどもう半分は、私の心にしっかり響いた。

陽子さんは、たかが高校生の恋愛なんてってバカにせず、真摯に答えてくれて。

私にとって、そんな陽子さんの言葉は涙が出るくらい嬉しい。

「ありがとう、陽子さん」

今、自分が晴れやかな表情してる気がする。

「私説教臭くなかった?大丈夫?」

「うん、バッチリ伝わりました!言葉の意味ばっかり考えてたけど、まずは藤君とちゃんと向き合ってみる。つり合うとか合わないとか抜きにして」

「頑張れ、小夏ちゃん!」

「ホントに、ありがとうございます。こんな相談に乗ってくれて」

ペコッと頭を下げると、陽子さんは慌てたように胸の前で両手を振った。

「そんな、改まらないでよ!私達、家族なんだから」

「うん。ヘヘ」

ほわんとした空気が私達を包んでた時、テーブルの上に置いてあった陽子さんのスマホが震えた。

「あら、(ハヤテ)からだわ」
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