フラグを全力で育てる系女子の恋愛事情〜なぜか溺愛されてますが〜
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現在夜九時のコンビニ前。事の起こりは、私が家の冷蔵庫を開けたところから始まる。

ない、牛乳が。

明日の朝はホットケーキにしようと決めてたのに、牛乳がないのは非常に困る。水でもいいけど、私は牛乳で作るのが好きだ。

もう気分は朝の焼き立てホットケーキだし、今更納豆ご飯には切り替えられない。

というわけで、コンビニに牛乳を買いにきた私なんですが。

「あ、あの…」

「ぶつかられた腕が痛いなぁ。どうすんの?これ」

「お姉さんなにちゃん?地味だね」

「絶対処女だろ」

「ハハッ、ウケる」

無事牛乳を買って帰ろうとしたら、コンビニ横の路地に溜まってたお兄さん達三人とぶつかって、現在進行形で絡まれ中。

正確に言えば、ぶつかったってより向こうが自らぶつかりにきた感じ。きっと普段からよくこうして、関係ない人に絡んでるんだろう。

「ねぇねぇ、ちょっと泣いてみてよ」

この距離からでも分かるくらい、酷いお酒の臭いがする。

「あ、あの…ごめんなさい」

「言葉だけ?伝わんないなぁ」

「でもお金とか持ってないです」

「うわ、俺ら女の子にカツアゲすると思われちゃってんじゃん」

「マジ傷付くわぁ」

どうする、これ。ナンパって感じでもないし、明らかにからかってるだけっぽいけど。

私は気の弱い方じゃないけど、年上のウェーイなお兄さん達に囲まれたらさすがに「どっかいけこの野郎!」とか言う勇気はない。

隙をついて逃げるか、コンビニの中に戻って店員さんに助けを求めるか…

「何やってんだ」

対処法を考えていたら、不意に私の背後からドスの効いた低い声が聞こえた。

「よ、小夏」

「あ…福間さん」

「このお兄さん達、友達?」

フルフルと、首だけを横に振る。

その瞬間、彼の瞳がスッと細められたのが分かった。
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