フラグを全力で育てる系女子の恋愛事情〜なぜか溺愛されてますが〜
今更だけど、私と違って福間さんはオシャレだ。金髪みたいな髪色と言葉遣いもキツイからヤンキー感強めだけど、美容師志望なら髪色が派手でもおかしくないのかもしれない。

「美容師目指してるって、カッコいい」

「お、マジで?惚れた?」

「アハハ」

「てめぇ今ごまかしたな」

言いながら、福間さんが私の頭をクシャクシャにした。

「でもなぁ」

「はい?」

「お前とコンビニで会った日さ、イライラしてたって言ったろ?」

「ああ、確かイライラしたからそのカバン投げたんでしたよね」

そのせいで私はけつまずいて、スイーツが入った袋をぶん投げたんだから。

「二年になってから上手くいかなくてよ」

「難しいんですか?」

「俺人の髪切んの好きだし、そういうセンスっつーの?あると思うんだよな」

「おぉ」

「ただなぁ。机座んのマジで無理」

「めっちゃそんな感じする」

「ああ?」

「いえなんでもありません」

「美術理論だの関係法規だの頭使う授業増えてきてさ。マジ禿げそう」

ウゲッという顔をする福間さんの顔を、私はまじまじと見つめた。




「あ?なんだよガンつけやがって」

「いや、凄いなって」

「は?」

「イライラするくらい真剣に向き合ってるってことだと思うから」

美容師の世界は私には分かんないけど、生半可な気持ちじゃ絶対務まらない。

「福間さん、努力家なんですね。私も見習わなきゃ。なにかに真剣にぶつかったことって、あんまりないから」

「お前…」

「あ、偉そうでしたか?」

「俺と付き合う?」

福間さんはまた立ち止まって、ドサッとカバンを置いた。

「え?」

「ぶつかってみりゃいいじゃん、俺に」

「え…っと」

「俺と付き合えよ、小夏」

真剣な彼の瞳が、私を睨みつけるみたいに真っ直ぐ射抜いて。ただでさえキリッとした力強い目つきの福間さんに見つめられると、息すらしずらくなる。

これは、アレだ。付き合うって、どこに行くんですか?

みたいな少女漫画オチじゃないよね。

男と女として、彼氏彼女にならないかってことだよね。

福間さんの雰囲気は、とても私をからかってるようには見えない。

だったら私も、ちゃんと自分の気持ちを伝えないとダメだと思った。

これでもし「冗談」とか言われたら、恥ずかしく泣けるかもしれない。
< 45 / 104 >

この作品をシェア

pagetop