フラグを全力で育てる系女子の恋愛事情〜なぜか溺愛されてますが〜
私は勢いに任せて、ガバッと頭を下げた。

「ごめんなさい!私まだ福間さんのこと大好きじゃないから付き合えません!」

今が夜で、しかも家付近の道端ってことも忘れて私は声を張り上げた。

「福間さんいい人だし、かっこいいし、頑張ってて凄いなって思うけど!お互いまだよく知らないし、付き合うならホントに好きになってからって思うから…だから…っ」

「フハッ」

頭を下げたままギュッと目を瞑る私の頭上から聞こえたのは、福間さんが噴き出した声。

顔を上げると、なぜか福間さんは笑ってる。

「小夏超乙女じゃん!」

「お、乙女…?」

「大好きになってからじゃなきゃ付き合わねぇの?とりあえずって選択肢はなしかよ」

「なしだよそんなもん!」

私にそんな上級スキル求めないでほしい。こっちはちゃんとした初恋をした記憶すらないっていうのに。

今時の若者のカップルスタイルがどんなもんか知らないし、そういうのから始まるのもアリかもしれないけど、私はそんなの嫌だ。

お互いがお互いを大好きじゃなきゃ、付き合いたいとは思えない。

「ごめん、俺軽い気持ちで言ったわ」

「は!?」

まさかの冗談エンド?私泣くよ?

「いや、軽いってのは違うか。さっきの小夏見て、こいつが俺の彼女になればいいのにって感じ?まぁ、俺もまだ大好きではないな」

そう言われたけど、不思議と嫌な気持ちにはならなかった。

「適当言ったわけじゃねーけど、そんな感じだから気にすんな!」

ニカッと笑った彼に、思わず心臓がギュッとなる。

「とりあえずフツーに友達ってことで。そっからどうなるかはこれから次第?みたいな」

「友達…」

「そ、友達。小夏が俺のこと大好きになっちゃった頃には、俺お前のこと好きじゃなくなってるかもしんねーしな」

「確かに」

「認めんな!」

「あ、あの…」

「ん?」

「ありがとう、ございます」

尻すぼみになってしまった私の頭を、福間さんはまたわしゃわしゃと撫でた。

「バッカ、気にすんなっつったろ!友達な!分かったか?」

「でも…」

「そこの否定はなしな。難しく考えんなよ、お前と気合いそうだから言ってるだけだし。お前んとこのラーメン、食いに行けなくなるのやだしな」

「はい…」

「つーか敬語なしっつったろ小夏!福間さんじゃなくて善一って呼べ!」

「無理」

「頑張れや!」

なんだこれ、顔熱い。

なぜか嬉しそうな顔をする福間さんに、心臓をギュッ鷲掴みにされたような感覚になった。
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