フラグを全力で育てる系女子の恋愛事情〜なぜか溺愛されてますが〜
私達が選んだのは、安くてボリュームたっぷりのステーキハウスだった。ランチが破格で、しかもライスお代わり無料という太っ腹加減だ。

「もーダメ、お腹いっぱい」

下腹をさすりながら歩く私を見て、颯君が小さく笑う。

「ほら、俺より全然食べない」

「ステーキ500グラムは無理だよー。ライスも三倍お代わりしてたし、颯君凄いね」

「実は俺もちょっと気持ち悪い」

「え、大丈夫なの!?」

「張り切って食い過ぎた」

「なにやってんのもう」

小さく笑いながら、彼の背中をさすった。最近やっと敬語も取れてきた気がする。

「ホントに大丈夫?ちょっと休もうか」

「いや、大丈夫」

なぜか急に挙動不審になった颯君に、私は立ち止まる。

「ちょっと休もうよ、なんか変だよ?」

「い、いやその…手、が…」

颯君の背中がピクリと反応したのが分かって、思わずさすっていた手を離す。

「ごめん、嫌だったかな」

「違う、違くて…そうじゃなくて…」

颯君はふいっと横を向いて、私と目を合わせようとしない。

「ドキドキしたっていうか…その…」

言いかけて、颯君はハッとしたように口をつぐんだ。

「ごめん、やっぱちょっと食べ過ぎた」

「ちょっと休む?」

「帰れば平気」

俯いてる颯君の耳が、心なしか赤い気がする。日差しが強いせいなのか、調子が悪いからなのか。

颯君はもともと口数の多い方じゃないけど、そこから家までの道のりは特に静かで。

彼が言いかけたセリフは、なんとなく続きは聞かない方がいいような気がした。
< 51 / 104 >

この作品をシェア

pagetop