フラグを全力で育てる系女子の恋愛事情〜なぜか溺愛されてますが〜
とまぁ長年父と娘でそれなりに仲良くやっている私達。そんなある日、お父さんが珍しく真面目な顔で私の部屋にやってきた。

「小夏、ちょっといいか?」

お風呂上がりの、アイスタイム中。スプーンいっぱいにすくったチョコミントを頬張りながら、目線だけをお父さんに向けた。

「陽子さん、居るだろ?」

「うん」

陽子さんとは、お父さんの交際相手だ。お店の税金やら確定申告やらをお任せしてる税理士事務所の事務員さんで、お父さんとは確か三年以上お付き合いしてる。

お母さんが天国に行ってもうすぐ十年経つし、陽子さんは優しくていい人だし、二人の関係に嫌な気持ちをもったことはない。

むしろ私に遠慮してあんまり進展しない二人に、やきもきしてしまうくらいだ。

「小夏は、陽子さんどう思う?」

「いい人だと思う。美人だし、お父さんにはもったいない」

「結婚…ってなったらどうする?やっぱり、嫌か?」

「全然。むしろなんで私が反対すると思ってるの?」

「い、いや…デリケートな問題じゃねぇか。小夏も難しい年頃だしよ」

「私難しい?めっちゃいい子じゃん」

反抗期とかないし、お父さんのパンツだって洗濯回してるし。

「そういうんじゃなくてさ、なんつーかな…こう…」

「私のお母さんは一人だけなの!新しいお母さんなんか要らない!って?」

「う…」

「それともまさか、私のお父さんが陽子さんに取られちゃう!みたいな?」

「い、いや小夏…」

頑固で難しい顔ばっかりしてるお父さんが、珍しくうろたえてる。

私は空になったアイスのカップをテーブルに置くと、キッとお父さんを睨んだ。

「そんなこと、言うわけないでしょ?お父さんだって今まで一人でお店と私のこと頑張ってきたんだし、自分の幸せ考えたっていいじゃん。それを私が反対するなんて、そんなこと考えないでよ!」

「わ、わりぃ小夏…」

「こういう話題になるとすぐ弱気になるんだから。私を気遣ってくれてるのは分かるけど、私だってお父さんが好きなんだよ?お父さんが考えて決めたことだったら、応援するに決まってるでしょ?」

「小夏…」

「うわ、私めっちゃいい娘じゃない?お父さん、育て方上手いね〜」

「お前なぁ…」

「へへっ」

私が笑うと、お父さんもつられたように笑った。

「おめでとう、お父さん」

「ありがとなぁ、小夏」

お父さんの目に、一瞬キラリと輝くものが見えた気がしたけど、私は気付かないフリをした。
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