フラグを全力で育てる系女子の恋愛事情〜なぜか溺愛されてますが〜

マネキンの前に立って、恐る恐る手を伸ばす。そっと髪に触れてみると、意外と普通だ。もっとゴワゴワのザ・人形みたいな感じかと思ってた。

「ロングヘアじゃないんですね」

「お前が違うからな」

「え？」

「どうせ覚えるなら、真似できそうなのがいいだろ？」

「あ…」

私の髪がミディアムヘアだから、このマネキンの髪の長さも合わせてくれたのか。優しいな、福間さん。

「よし、私頑張ります！」

「おう、頑張れ！」

福間さんに背中をバシッと叩かれて、さらにやる気が湧いてきた。

「まずこんくらい毛束取って…」

手際の悪い私にイライラすることもなく、福間さんは丁寧にゆっくり教えてくれた。そのおかげで、少し不恰好だけどなんとか形にすることが出来た。

「な？できたろ？」

「ホ、ホントだ…」

マネキンが物凄く可愛く輝いて見える。

「見た目は凝ってるみたいなのに、意外と手順少なかったです」

後ろで緩くハーフアップにして、結び目に毛束を通してクルリンパ。その後クルリンパした場所のすぐ下の位置の、右耳の後ろの毛束を取ってねじりながら右耳の辺りまで持っていってピンで固定。後は全体のシルエットが丸くなるように毛束を引き出して終わり。

「楽勝だったろ？」

「楽勝ではなかったです。思ったよりはってだけで」

「要は見せ方なんだよ」

「見せ方？」

「そ。今やったアレンジ、画像見ただけだったら小夏はやってみようとすら思わねぇだろ？」

「まぁ確かに、難しそうだなって思って最初から挑戦しないです」

「こういうことって意外とあるからな？無理だと思ってても、やってみたら意外と自分に合ってるかもってこと」

「いいこと言いますね、福間さん」

「だろ？実は俺すげぇんだよ」

福間さんはニヤニヤしながら私の肩をポンポン叩いた。