フラグを全力で育てる系女子の恋愛事情〜なぜか溺愛されてますが〜
カッコ悪くて恥ずかしいところ見られたのに。

もう二人で会えないなんて、酷いことも言ったのに。

藤君は変わらず、私に優しい。

「…どうして優しくしてくれるの?」

私の問いかけに、藤君は一瞬顔を強張らせる。だけどすぐに、いつもの爽やかな表情に戻った。

「俺達、クラスメイトでしょ?」

ズキン

なにかが胸に突き刺さったみたいに、鋭い痛みが走る。

その言葉に傷つく資格なんて、私には絶対ないのに。

無理矢理笑顔を作ると、私は彼の手からシャツを受け取った。

「ごめんね、気遣わせちゃって」

「気なんか遣ってないよ」

「ありがとう、藤君」

私笑えてるかな、ちゃんと。これ以上惨めなところ、藤君には見られたくない。

「夏休み中に食べ過ぎて太っちゃったみたいで、恥ずかしいな。アハハ」

笑いながらごまかすと、一応藤君も合わせて笑ってくれた。

「楽しかった?夏休み」

「え?う、うん。楽しかったよ」

藤君のことばっかり考えてたなんて言えない。

「…それって朝言ってた、福間さんって人のおかげ?」

「えっ?」

キョトンと藤君を見つめると、彼はハッとしたように手で口元を押さえた。

「ご、ごめんなんでもない」

「ふ、ふじく」

「俺行くね…っ」

私の言葉を最後まで聞かないまま、藤君は足早にその場を去っていった。
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