フラグを全力で育てる系女子の恋愛事情〜なぜか溺愛されてますが〜
「お前、全部俺に荷物持たせてなにやって…」

息を切らした藤君が、江南君をジトッと睨む。私の存在に気づくと、目を丸くして驚いた。

「あ、相崎さん?」

「さっき偶然見かけてさぁ、声かけちゃった」

なんの悪びれもなさそうな江南君。藤君は彼とは対照的に、たくさんの紙袋を抱えてる。

「なんだよ小夏。お前モテてんじゃん」

福間さんは、この状況を楽しんでるらしい。

さっきもあんなことしたし…ちょっとドキッとしちゃったじゃん。

藤君は私と福間さんに交互に視線をやって、それ以上はなにも言わなかった。

ーークラスメイトなんだし

この間の藤君の言葉が、ヂクッと胸に突き刺さる。私達はもう、特別でもなんでもないただのクラスメイト。

「じゃあ、俺行くわ」

いつのまにか食べ終わっていた福間さんはそう言って、スッと私の耳元に顔を寄せる。

「どっちが好きなヤツか知んねえけど、頑張れよ小夏」

「…っ」

瞬間、ボンッ!と顔が熱くなる。福間さんはシシシッていたずらっぽく笑いながら、私を置いて去っていった。

シーン

なぜか分かんないけどめちゃくちゃ気まずい。というか今にも溶けてしまいそうなアイスを、私は慌ててペロッと舐めた。

「今の人、相崎さんの彼氏?めっちゃ派手だったけど」

福間さんが歩いていった方を見ながら、江南君が呟く。

「ちっ、違うよ。あの人はウチのお店の常連さん」

「ただの常連さんと、休みにアイスなんか食ったりする?」

「それは…その…」

告白断る為に来てもらったなんて言えるわけない。

「あっ、え、江南君達はなにしてたの?買い物?」

とっさに話題変えたけど、不自然だったかな。そう思ったけど、江南君は特に気にしてない様子だった。

「俺はさ、姉貴に頼まれてお使い。マジ勘弁してほしいよなー、人の大事な休日をさ」

江南君のお姉さんといえば、映えクレープ屋さんを営んでる一香さん。美人で親切で、クレープも凄くおいしかった。

江南君と藤君と三人で食べに行った日が、凄い昔のことみたいに感じる。

藤君とは、一香さんの開業祝いを一緒に選びに行ったりもしたっけ。

あの頃は、全然意識せずに会話できたのに。

今はもう、どうやって話せばいいのか分かんない。
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