フラグを全力で育てる系女子の恋愛事情〜なぜか溺愛されてますが〜
「……」

「……」

爽やかな土曜の昼下がりとは思えないくらい、めちゃくちゃ微妙な空気が流れてる。

藤君はこっち見ないし、私もなんて声をかけたらいいのか分かんない。

「…あっ!ああ、そういえば〜!」

江南君が、突然大声を出しながらパン!と手を叩いた。

「俺約束あったの今急に思い出したわ!諒、悪いけどその荷物姉ちゃんの店に届けといてくれよ!」

「は!?お前なに言って…」

「諒一人じゃ大変だし、相崎さんも手伝ってくんない?姉ちゃんも喜ぶと思うし」

「えっ、私…?」

「じゃあそういうことで、二人ともあとよろしく〜〜!」

江南君は矢継ぎ早にそう言うと、めちゃくちゃいい笑顔で走り去っていった。

…いや、演技ド下手過ぎるでしょ。

私と藤君を二人にさせようって魂胆が透け透け過ぎて、もはや突っ込む気にすらなれなかった。

「ごめんね、相崎さん。太一のヤツがアホで」

「あ、あはは」

「これは、俺一人で大丈夫だから」

ニコッと笑う藤君に、心臓がギュウッと縮む。

痛いけど、これは自業自得。

私はまだなに一つも、頑張ってないんだから。

「良かったら、私にも手伝わせてくれないかな。もちろん、藤君が迷惑じゃなかったらだけど」

「いや、それは全然…でも予定とか」

「なにもないから大丈夫」

江南君がせっかくくれたチャンスを、逃したくない。

「それに、クレープだって食べたいし」

「今アイス食べてたのに?」

「そっ、それとこれは別腹っていうか!」

恥ずかしい。食いしん坊だと思われた。そんなだからスカートのホック取れるんだよって思われた、絶対。

「ハハッ、ごめん意地悪言って」

真っ赤になってる私を見て、藤君は笑う。

「じゃあ、手伝ってもらっていい?」

「…うんっ!」

多分、私の顔は分かりやすくパアッと輝いた気がする。
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