フラグを全力で育てる系女子の恋愛事情〜なぜか溺愛されてますが〜
それから藤君と二人で、一香さんのところまで頼まれたお使いの品を渡しに行った。

一香さんは江南君じゃないことに驚いてたけど、クレープまでご馳走してくれて「後で太一シメとくから」ってキレイな顔で笑ってた。

「付き合ってくれてありがとね」

「ううん。藤君もお疲れ様」

無事任務を終えた私達は、そのまま帰途に着く。駅まで送るって言ってくれた藤君の好意に、私は甘えることにした。

「太一のヤツ、絶対約束とかないくせに」

「あはは、江南君っておもしろい人だよね」

「ずっと一緒だとたまに疲れる」

ふうっと溜息をつく藤君だけど、仲がいいからこそ出来ることだ。

「相崎さんも、隅田さんと仲いいよね」

「小学校から一緒だし、私に付き合ってくれるの華くらいしかいないから」

「そんなことないよ」

藤君はいつでも優しい。

この間変な態度取っちゃった私にも、クラスメイトだからって変わらずに接してくれる。

こうやって少しずつ普通に戻って、クラスが替わったら話すこともなくなって、卒業すれば見かけることすらなくなって、藤君の中から私は消える。

そう考えたら今こうしていられるのは、奇跡みたいなことなんだ。



「「あの」」

意を決して藤君の方を向くと、彼も同じように私を見つめていた。

まさかの話しかけるタイミングすら被って、その後「あ…」っていうところまでシンクロしてしまった。

「すご、被ったね」

「だね」

なんだかおかしくなって、二人してクスクス笑う。

「相崎さんからどうぞ」

「えっ!いやいや、藤君から」

「いやいや相崎さんから」

この不毛なやりとりが数回続いた。
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