フラグを全力で育てる系女子の恋愛事情〜なぜか溺愛されてますが〜
結局じゃあ私から…ってなったけど、改まると余計恥ずかしい。

「昨日はありがとう」

藤君に気づかれないよう、後ろ手に拳を握った。

「気にして追いかけてきてくれたことも、シャツ貸してくれたことも、ちゃんとお礼言えなかったから」

「あ…いや、うん。それは別に」

「私藤君に嫌な態度取ったのにそれでも普通にしてくれて、ありがたいよ」

本当はただのクラスメイトは嫌だなんて、そんなわがまま言えない。

「私の話はこれでした。じゃあ次、藤君どうぞ」

「あ…うん」

私はパッと手の平を藤君に差し出す。彼はいつもと違って、なぜかはっきりしない態度で言葉を濁す。

「いや、俺もこの間のこと謝ろうと思って。訳分かんないこと言って先行っちゃったし」

「そんなの、別に謝ることじゃ…」

「さっき一緒にいた人が、福間さん…?」

見たことのない表情をしてる藤君に、心臓が跳ねる。

藤君がどういう意図で福間さんのことを聞いてるのか、私には分かんない。

「うん、そうだよ。ウチの店の常連さん」

「もしかして、付き合ってるとか?」

「え!ち、違うって!福間さんはそんなんじゃないから!」

誤解されたくなくて、慌てて否定する。でも藤君の表情は固いまま。

「二人で会えるってことは、そういうことかなって…」

「あ…」

ーーごめん、もう二人では会えない

私は確かに、藤君にそう言った。あの時はまだ好きだとかそういうのが分かんなくて、仮にも「彼氏候補にしてほしい」って言われた人と二人で出かけるのは、よくないって思ったから。

「…ごめん。俺未練がましいね」

私がなにか答える前に、藤君が呟く。

「自分でクラスメイトって言ったくせに、ごめん」

「いや、あの…」

どうしよう。どうするのが正解なのか、全然答えが浮かばない。胸が千切れそうで、手が震えそうで、喉が張りついて声も上手く出せない。

好きなのに。

好きだって気づいたのに。

ここから先が、なにも分からない。
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