ホワイト・ターン・オレンジ〜夕日色の白い部屋で幼なじみと甘いひととき〜
 ポン

 と、アプリの通知の音がいつもより大きく聞こえた。

 そのせいか、新の体がビクリと震えて気まずそうに離れて行く。

 わたしも恥ずかしくて、なんとなく気まずい感じになった。


 気まずさを紛らわせるようにスマホ画面を見て、あの通知があることを確認する。

「あ……鍵、開いたみたい。わたし行くね」

「あ、ああ……」

 まともに視線を合わせられないまま立ち上がると、「ちょっと待て」と引き留められる。


「えっと、何?」

「悪いけど、もっかいスマホ貸して? 追加で録音しときたい」

「そうなの? 分かった……はい」

 なんの不審もなく素直に渡した後、「聞くなよ?」と言われたのでまた頷いて新から離れた。


 そうして距離を取って、冷静になる。

 今の会話と、わたしを抱きしめたこと。
 次の新は知らないってことになるんだ。

 前回少し寂しいと思った感情が痛みに変わる。

 でも、これはどうしようもないこと。
 次に行って、カウンターを十にしないとこのループは終わらないんだろうから。

 落ち込みそうになる心を何とか留めていると、新がスマホを返してくれる。

 これ以上名残惜しくしても辛くなるだけな気がしたから、わたしはすぐにドアを開けた。


「じゃあね」
「ああ」

 新も簡単な挨拶のみ返してくれる。

 その方が後ろ髪を引かれなくていいのかも知れない。

 わたしはまた、霞に身を投じた。
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