ホワイト・ターン・オレンジ〜夕日色の白い部屋で幼なじみと甘いひととき〜
 新の言う通り教室では前と変わりなかったから、そんな変化があったなんて知らなかった……。

 幼馴染で、近くにいたのに知らなかったなんて……。

 悔しくて、苦いものが口の中に広がるような気がした。


「それでも、ほのかは側にいてくれただろ? こうして、嫌な顔もせずいつも迎えに来てくれて……だから俺は、ほのかのことが前よりもっと好きになったんだ」

「新……」

「俺の貧血って、精神的なものだろ? 多分、周囲の目を気にしてる部分もあるんだろうけど……」

 そこで一度言葉を切った新は、視線を一度逸らしてから意を決したように真っ直ぐわたしを見た。


「ほのかと二人きりでいられる今の時間を無くしたくないって思ってることも、原因だと思う」
「それって……」

 それは、わたしと同じことを思っていたってこと?


「誰にも渡したくない。俺だけを見て欲しい。……ほのか、お前はこんな俺でも好きになってくれるか?」

 最後は自信なさげに眉尻を下げる新。

 そんな弱さすら愛しく感じて、わたしはためらうことなく頷いた。

「当たり前だよ……わたしは、どんな新でも好きなんだから」

「っ! ほのかっ!」

 息を呑んで、泣きそうにも見える笑みを浮かべた新はそのままがばっとわたしを抱きしめる。


 爽やかな香りと、硬い腕。
 そして、熱いくらいの体温。
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