可憐な花は黒魔導士に二度恋をする
「前のわたしは最初から第2師団を志望していたんですか?」
「ああ、そう聞いている」

 おかしい!一体わたしに何があったんだろうか。
「わたしは第2師団でみなさんから『聖女様』と呼ばれてモテモテでしたか?」

 ハインツ先生が足を止めてわたしを見つめた。
 いや、睨んだというほうが適切な表現か。

「すみません、調子に乗りました。そんなわけないですよね、ははっ」

 乾いた笑いでごまかすとハインツ先生は再び歩き始めて、遠い目をしながら一瞬笑ったように見えた。
 
「聖女というよりは、若女将のような扱いを受けていたな」

 なんですと!?
 22歳の下っ端のわたしが、むさくるしい男どもを束ねる女将?
 そこは「マスコット的存在」とか「みんなの妹」とか言って欲しかった。

 ハインツ先生の表現力や認識がおかしくないのだとしたら、4年後のわたしはどんな人間だったんだろうか。
 ますますわからなくなってしまった。

 
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