可憐な花は黒魔導士に二度恋をする
 昨夜、どうすればハインツ先生に見つめられた時にドキドキせずにいられるかを頭の中で考えていたら、突然ハゲたハインツ先生の姿が脳裏に浮かんだ。

 やだ!ハインツ先生ったら、ツルッパゲになっても妙な色気があって怖い!

 そう思いながら笑うと、頭の中でケタケタと笑う声が響いた。
「もうっシャドウったらヘンな妄想しないでよ」
 
 どうやらシャドウがハインツ先生への対処法を考えてくれたようだ。
 そこからしばらく、ハゲのハインツ先生に奇妙なカツラをかぶせたり、下まつ毛を伸ばしてみたり、鼻毛を書き加えて見たりと「妄想落書き大会」が始まり、深夜遅くまでシャドウと二人で笑い転げたのだった。

 
 そんなことがあった翌朝だったから我慢できなかったのだ。

「夜更かししながら二人で楽しいことを考えていたので」
 ハゲたあなたの顔に落書きをして楽しんでいましたとは、さすがに言えない。
 
「きみの魔物はいま猫のような形をしている?」
「よくわかりましたね!」
「きみの目の奥に何となくそんな形の影が見えたから」

 ハインツ先生はやっぱりすごいわ!と思いながら、嬉しくなってこの子にシャドウという名前を付けたのだと言うと、困った顔をされてしまった。
 父と同様、魔物に情が移るようなことをしてはいけないと思っているのだろう。

 でもハインツ先生と一緒に魔憑きの研究書を読んでいる時に、ある文献に書かれていた「上手な付き合い方」という項目が目を引いた。
 「笑い」には浄化作用や解放作用があり、たくさん笑うと中の魔物も癒されるのだという。
 
 だとすれば、わたしもこの子とたくさん笑って楽しい思い出を作りながら仲良く暮らしていきたいと思っている。

 
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