可憐な花は黒魔導士に二度恋をする
 いつかシャドウがわたしから離れてくれたら、わたし個人としては万々歳の結果になるのだろう。
 また職場復帰して魔導士として仕事もできるだろうし、普通に恋愛や結婚ができるようになる。

 しかしそれではダメだ。
 わたしはシャドウの更生を願っている。
 たとえそれが絵空事だと言われようが、この子ならできると信じたいのだ。

「わたしはシャドウがより良い状態で、しかも自分の意志で他の依り代に移る日が来るまでずっとこのままでいたいんです。案外すぐか何年も先か見当はつかないけど、どちらかが犠牲になるようなことにはなりたくありません」

 もちろん共倒れも御免だ。

「そして、シャドウが独り立ちした暁には、わたしもドキドキでキラキラな恋をしますから!」

 あら、思わず熱くなって話が妙な方向へずれてしまったわ。
 でもシャドウも一緒にガッツポーズをしているようだから、よしとしよう。

 するとハインツ先生は、わたしをじっと見つめたまま片手を壁から離した。
 その指先がわたしの頬に触れようとして、その直前にきゅっと握って下ろされる。
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