可憐な花は黒魔導士に二度恋をする
ハインツ先生は、18歳の頃のわたしもすでに知る存在だった。
しかし彼は、わたしの父親であるカルス・ローレンスが師団長を務める魔導士第2師団に所属する凄腕のエリート黒魔導士だったはずだ。
それが今、魔導士養成学校で教師をしているのは、魔物の封印に失敗した責任を取って師団を辞めたからだ。
本来ならば師団長である父が引責辞任するのが筋なのだが、ハインツ先生と同時に辞表を提出したところ「むしろおまえは残ることで責任を取れ」と上の人に言われてしまったらしい。
4年間の月日が巻き戻ってしばらく昏睡状態に陥っていたわたしは、父が誰かと言い争う声で目を覚ました。
「だからダメだと言ったんだ!」
「あれ以外の方法が無かったことは団長も理解していたはずです」
「そうじゃない!何故リナリアをあのミッションに参加させたのかってことだ!」
「あの状況で自分の役割を全うできる白魔導士が他にいますか?いないでしょう」
「途中で失敗すればよかったんだ。なんでこんなことに…」
「………」
お父様がわたしのことで喧嘩している。
意識を覚醒させたわたしは、重い瞼をゆっくりと持ち上げた。
首をわずかに傾けて、父と言い争っているのがハインツ・エルシードだと気づいてギョッとした。
ひたすら寡黙な人だと思っていたのに、こんな大声が出せるのね!?
しかも、部下のハインツをとても可愛がっているはずの父がどうして彼と口論しているのかわからない。
その時、耳の奥に幼児のすすり泣くような声が響いた。
誰の声だろう。
なんでわたしの中から聞こえるんだろう…?
「喧嘩しないで。誰かがわたしの中で泣いているから」
喉がカラカラで掠れた声になってしまったが、どうにか告げると、父がベッドに駆け寄って来た。
「リナリア!大丈夫か!?」
わたしの手を握る父よりも、その向こうに見えるハインツが口元を手で覆ってうつむく姿のほうが気になった。
あの時、ハインツは泣いていたのだと思う。
しかし彼は、わたしの父親であるカルス・ローレンスが師団長を務める魔導士第2師団に所属する凄腕のエリート黒魔導士だったはずだ。
それが今、魔導士養成学校で教師をしているのは、魔物の封印に失敗した責任を取って師団を辞めたからだ。
本来ならば師団長である父が引責辞任するのが筋なのだが、ハインツ先生と同時に辞表を提出したところ「むしろおまえは残ることで責任を取れ」と上の人に言われてしまったらしい。
4年間の月日が巻き戻ってしばらく昏睡状態に陥っていたわたしは、父が誰かと言い争う声で目を覚ました。
「だからダメだと言ったんだ!」
「あれ以外の方法が無かったことは団長も理解していたはずです」
「そうじゃない!何故リナリアをあのミッションに参加させたのかってことだ!」
「あの状況で自分の役割を全うできる白魔導士が他にいますか?いないでしょう」
「途中で失敗すればよかったんだ。なんでこんなことに…」
「………」
お父様がわたしのことで喧嘩している。
意識を覚醒させたわたしは、重い瞼をゆっくりと持ち上げた。
首をわずかに傾けて、父と言い争っているのがハインツ・エルシードだと気づいてギョッとした。
ひたすら寡黙な人だと思っていたのに、こんな大声が出せるのね!?
しかも、部下のハインツをとても可愛がっているはずの父がどうして彼と口論しているのかわからない。
その時、耳の奥に幼児のすすり泣くような声が響いた。
誰の声だろう。
なんでわたしの中から聞こえるんだろう…?
「喧嘩しないで。誰かがわたしの中で泣いているから」
喉がカラカラで掠れた声になってしまったが、どうにか告げると、父がベッドに駆け寄って来た。
「リナリア!大丈夫か!?」
わたしの手を握る父よりも、その向こうに見えるハインツが口元を手で覆ってうつむく姿のほうが気になった。
あの時、ハインツは泣いていたのだと思う。